【改訂版のさらなる改訂記録】
2020年7月21日
5 .否定での違い に
・don’t have to が「〜してはいけない」(= must not)という禁止の意味を表すことがある
を例文とともに追記した。
2017年11月に投稿した「must と have to」の改訂版です。
体裁を整えました。内容自体はあまり変わっていません。
must と have to については,学習辞書や文法書に詳しい記述があります。
あまりに詳しいので,学習者にとっては,
どう覚えて,どう使えばいいのか?
を把握するのが大変です。
それで,少し整理を試みたいと思います。
.
must に特徴的なことは緑字,have to に特徴的なことは青字にしています。
.
初級 としては,
・must と have to の違いに神経質になる必要はない
・どちらか迷ったら,have to を使えばよい
・must は意味が強い(You must … は命令になるので注意)
ということを頭に入れておけば,とりあえずはだいじょうぶです。
中級 〜
もう少し詳しく,must と have to の働きを具体的に見てみましょう。
感覚をつかむために,例文が多めになっています。
例文等に付けた [1], [2], [3] … は,参考文献の番号です。
1. 「〜しなければならない」(義務・必要)での must と have to
・自分(話し手)の意志を表現したいのであればmust を使ってよい
. (have to でもかまわない)
・外部の事情によるのであれば have toを使う
I really must stop smoking. [1]
本当に禁煙しなくちゃ(自分の強い意志で)
I must get back home by midnight. My parents will be mad if I don’t! [2]
私は夜12時までに帰らなければいけないの。そうしないと両親が怒るから!
(理由は自分の外からのことだが,自分自身が強く思っている)
.
つまり,外部の事情があるという形式的なことよりも
自分自身の気持ちが強ければ must
.
You must be more careful.[1]
もっと注意しなくちゃ駄目だ(強い勧告か命令 = 話し手の強い意思)
He must stop playing around.[1]
彼は遊び回るのをやめなければならない(話し手の考え)
I must make an appointment with the dentist.[1]
歯医者と予約しないといけない(歯が痛いので,話し手が自分ででそう思う)
I have to see the dentist tomorrow.[1]
明日は歯医者に行かないといけない(予約しているので)
I’m afraid I must go now.[3]
(「もう遅いのでそろそろ帰りたい」と自分で思う時などに使える)
I’m afraid I have to go now. [3]
(別の約束などで「帰るのがやむをえない」という意味を出せる)
You have to go. It’s getting late.[4]
帰った方がいい もう遅いから
I have to go to New York on business next week.[3]
来週,仕事でニューヨークに行かないといけません。
I have to get up early tomorrow. My flight leaves at 7:30.[6]
明日は早く起きないといけません 飛行機が 7:30 に飛び立ちます
You may not want to go, but you’ll have to [╳must].[5]
君は行きたくないかもしれないが行かなくてはならないだろう
(君は事情で行くしかないと言っている)
.
義務・必要の意味の強さ: must > have to > ought to > should [5] そのため次のような違いが生じる[4] “Do you want to go to a movie?” という誘いに対して, 1) “I must do my homework, so I can’t go.” 2) “I should do my homework, but I will go.”
映画を見に行きませんか?
宿題があるのだけど行く場合,行かない場合
. 宿題をしないといけないので行けません
. (must のあとにそれでも I will go. とは言えない)
. 宿題をしないといけないけど,行きます
2.「〜にちがいない」(確信)の must と have to
・話し手の判断(確信)を示す時はmust を使う
. (must は,会話では,この用法が多い)
・この場合,動詞は普通,be動詞などの状態動詞
・100% の確信があれば I’m sure (that) … を使える
He must be a college student.[2]
(大学の教科書を小脇に抱えている,などから判断して)
I saw a light go on, so there must be someone at home.[4]
明かりがついたから きっとだれか家にいるよ
You must be Mr. Sato.[2]
(佐藤さんと約束した時間にドアを叩く音がしたので,ドアの向こうの人に向かって)
Your mum must not care.[7]
君のお母さんはきっと気にもしないよ
You must be joking! [5]
(驚いて)ご冗談でしょう!
・have to を使うと,客観的な証拠があることを暗に示せる
She has to be the culprit.[3]
彼女が犯人にちがいない(十分な証拠がある)
It has to be true. [5]
それは本当にちがいない(十分な証拠がある)
It doesn’t have to be true. [5]
それは本当であるとは限らない(十分な証拠がない)
・確信の must で may に近い軽い推測を表現することもある
You must be hungry after your walk.[1]
散歩の後だから,きっとおなかがすいたでしょう
You must be tired from your long journey.[4]
長旅でさぞお疲れでしょう
・疑問文・否定文では can を使う
Can it be true?[1]
いったい本当だろうか?
The report cannot be true.[1]
その報告は,本当のはずがない
3. 「ぜひ 〜 しなさい」(強いおすすめ)での must
・must は,親しい間柄で強いおすすめに使える
You must see that movie.[5]
その映画は必見です
You must eat this cake.[1]
このケーキ,ぜひ召し上がってみてください
You must come again sometime.[5]
いつかまたぜひいらしてください(招待の気持ち)
適当な副詞を付けるなどして have to でもおすすめを表せる
If you go to New York, you really must visit the Empire State Building.[6]
. you really have to visit …
. ぜひ行くべきです( really で「ぜひ」という気持ちを出せる)
.
4. 書かれた指示・規則で見かける must
You must write your answers in ink.[7]
.解答はインクで書きなさい(試験問題での,書かれた指示)
Application forms must be submitted by March 31 at the latest.[4]
願書は遅くとも3月31日までに提出のこと(掲示など)
.
5. 否定での違い
・must not,mustn’t は禁止を表す
You must not touch it.[1]
それに触れちゃいけない
You mustn’t do that![2]
そんなことしちゃダメだ!
.
・義務・必要の否定「〜しなくてもよい」には,
. don’t have to,don’t need to,needn’t を使う
You don’t have to tell me.[1]
教えてくれなくてもいいよ
You don’t〈have to tell me〉.
ということはない〈私に教えるべき〉
.
・don’t have to が「〜してはいけない」(= must not)という禁止の意味を表すことがある
.(相手に感情を傷つけられた場合に,切り返す形で一種の抗議として用いられる)
“Walk!” “You don’t have to shout.”[4]
「歩け!」「そんなに大きな声を出すことはないじゃないの」
.
6. 形式上の使い分け
・他の助動詞と共に用いるときは must を have to で代用する
If we miss the last bus, we will have to walk.[4]
最終バスに乗り遅れたら歩かないといけなくなる
・must は過去形がないので had to で代用する
I had to do lots of boring exercises.[4]
つまらない練習問題を数多くしないといけなかった
・must では時制の一致は通例適用されない
The doctor said that I must stop smoking.[4]
医者にタバコはやめなさいと言われた
had to を用いて時制を一致させることもある
The doctor said that I had to stop smoking.[4]
.
7. have got to
・会話で,have to の代わりに have got to が用いられることがある
・元は《英》だが,《米》でも用いられるようになった
・have got to は,より強意的で,緊急性や感情的な意味合いの時に好んで用いられる
I’ve got to run.[4]
もう行かなくちゃ(話を切り上げる時の決まり文句)
.
[1]『現代英文法講義』
must
① 強い義務・必要 (obligation/necessity)
. 話し手の意志(1,2,3人称に,強い義務・必要があるという考え)
I really must stop smoking.
本当に禁煙しなくちゃ(自らに課す義務・必要)
You must be more careful.
もっと注意しなくちゃ駄目だ(強い勧告・命令)
You must eat this cake.
このケーキ,ぜひ召し上がってみてください(強い勧誘,心からの推奨:「好意の押し売り」の感じを伴う)
He must stop playing around.
彼は遊び回るのをやめなければならない(話し手の意志)
3人称主語の場合は,話し手の意志の他,社会的規則による場合がある
All passengers must wear seat belts.
すべての乗客は,シートベルトを締めなければならない
must not,mustn’t は禁止を表す
You must not touch it.
それに触れちゃいけない(must は否定されておらず,[not touch it] がmust だと言っている)
義務・必要の否定「… しなくてもよい」は,don’t need to,needn’t,
《米》don’t have to を用いる
You don’t have to tell me.
教えてくれなくてもいいよ
② 論理的必然性 (logical necessity)
. 話し手の判断(「きっと …」,「… にちがいない」)
. 動詞は普通,状態動詞
You must be hungry after your walk.
散歩の後だから,きっとおなかがすいたでしょう
論理的必然性の疑問文・否定文では,原則として can を用いる
Can it be true?
いったい本当だろうか?
The report cannot be true.
その報告は,本当のはずがない
.have to
① 強い義務・必要 (obligation/necessity)
. 外部の事情による義務
I have to see the dentist tomorrow.
明日は歯医者に行かなければならない(予約しているので)
I must make an appointment with the dentist.
歯医者と予約しなければならない(歯が痛いので)
② 論理的必然性 (logical necessity)
. 外部の証拠に基づく強い推定(「… に決まっている」,「… にちがいない」)
I heard a girl’s mutter, “Shit! It had to be Jenny.
女の子の「くそ!」というつぶやきが聞こえた。ジェニーにまちがいなかった。
.
[2] 『一億人の英文法』
英語初心者のうちは,must と have to の違いに神経質になる必要はない。どちらを使っても誤解は生じない。
must (特徴は高い圧力,今,ヒシヒシと感じられる圧力なので must は過去形がない)
① 義務 「〜しなければならない」(ある行為に駆り立てる圧力)
. 話し手が強く思う場合
I must get back home by midnight. My parents will be mad if I don’t!
私は夜12時までに帰らなければいけないの。そうしないと両親が怒るから!
(この例では,外部からの理由で,話し手が強く思っている)
must not : 禁止 「〜しちゃダメ」(「ダメ!」という圧力)
You mustn’t do that!
そんなことしちゃダメだ!.
② 強いおすすめ 「〜しなくちゃいけないよ」(好意的な圧力)
You must go see Tokyo Sky Tree. It’s amazing! (go see = go and see)
東京スカイツリーを見に行かなきゃ。すごいよ!
③ 強い確信 「〜にちがいない」(間違えようのない結論への圧力)
The injury isn’t serious? You must be relieved.
ケガはたいしたことない? ホッとしたにちがいないね。
.
have to (特徴は,強力な必要性・必然性)
① 義務 「しなくてはならない」
. 客観的必要性が強く感じられる場合
You have to have your hair cut.
髪を切らなくちゃいけないよ
You (have to have> your hair cut).
S V O C
not have to : 必要がない
You don’t have to like your teachers, but you mustn’t insult them!
先生を好きになる必要はないが,侮辱してはダメだ!
② 強い確信 「〜にちがいない」
. 客観的必然性(十分な証拠の積み重ね)
She has to be the culprit.
彼女が犯人にちがいない(十分な証拠がある)
.
[3] 『ここがおかしい 日本人の英文法』
must と have to のどちらにすればわからないときは,have to を使えばよい
(個人的な確信であっても強ければ,心の中で客観的な事実のようになる,とも言えるので)
must
①(行為の必要性に対する)話し手の感情的確信 「あることをするのが必要だ」
下の(1) I’m afraid I must go now.
② 勧誘・奨励 「〜したらどう?」
You must go and see the exhibition at the National Museum − it’s fantastic.
国立博物館の展示会をぜひ見に行ったほうがいい。(あたたかく,熱心に勧める)
You must come and visit us if you’re ever in Alabama.
もしアラバマに来ることがあれば,ぜひ寄ってください。(招待の気持ち)
③ 規則
. 無生物主語 + must + be + 過去分詞
Application forms must be submitted by 30th June at the latest.
願書は遅くとも6月30日までに提出のこと
④ 強い推定 「かなりの自信を持って言える」
. 真実だろうと想像するに十分な根拠は持っているが確実ではない
. (100% の確信があれば I’m sure that …)
He must be a college student.
(大学の教科書を小脇に抱えている,などから判断して)
You must be Mr. Sato.
(佐藤さんと約束した時間にドアを叩く音がしたので)
.
have to
①(行為の必要性に対する)客観的事実 「あることをするのが必要だ」
例文: 次の (2),(3),(4) をみてください。
次の(1)と(2) の違いはそれほど気にする必要はない
(1) I’m afraid I must go now.
. (「もう遅いのでそろそろ帰って寝たい」など,話し手が個人的にそう感じている)
(2) I’m afraid I have to go now.
. (別の約束など,外的事情によって「帰るのがやむをえない」という意味を出せる)
次の(3)と(4)では,have to でないとへン
(3) I have to spend an hour traveling to work every morning.
. 毎朝,通勤に1時間かかります(1時間費やさないといけません)。
(4) I have to go to New York on business next week.
. 来週,仕事でニューヨークに行かないといけません。
.
[4]『 ジーニアス英和辞典 第5版』
義務・必要の意味の強さ: must > have to > should [ought to]
《米》では, くだけた話し言葉で have to が使われ, 堅い書き言葉や掲示文で must が使われる傾向がある
must
① 話し手によって課された義務
. have to より意味が強い
. 1人称では個人的に必要と考えていることを表す
. (規則で決まっているので自分としても必要だと考える,なども含む)
“Do you want to go to a movie?” “I must do my homework, so I can’t go.”
映画を見に行きませんか? 宿題をしないといけないので行けません
( “… but I will go.” とは言えない。must が should であれば可能)
2人称では立場の上の者が命令する時に使う
You must come to class on time.
授業に遅れてはいけない(教師が生徒に命令している)
② 必然性
. I’m sure ほど強くない
I saw a light go on, so there must be someone at home.
明かりがついたから きっとだれか家にいるよ
may に近い「軽い推測」の意でも用いられる
You must be tired from your long journey.
長旅でさぞお疲れでしょう (must ではなく tired に強勢が置かれる)
③ 掲示
Application forms must be submitted by March 31 at the latest.
願書は遅くとも3月31日までに提出のこと
.
have to
① 外部の事情によって課された義務
You have to go. It’s getting late.
帰った方がいい もう遅いから
. 事態を深刻に見せないために,
. mustが使えるところで意味の弱い have to が使われることがある
I ordered it and you have to do it.
命令だ それをしなさい
② 必然性
. 客観的な証拠の存在を暗示するため意味が強く確実性が高い
There has to be something illegal about what they are doing and maybe I can prove it.
彼らがしていることには法律に触れることがあるにちがいない 証明することだってできるだろう
間接話法での意味の違い
She says you must apologize.
彼女は,あなたが謝るべきだと言っている(し, 私もそう思います)《話し手が共鳴している》
She says you have to apologize.
彼女は,あなたが謝るべきだと言っていますよ《単なる「報告」》
.
[5] 『ウィズダム英和辞典 第3版』
義務・必要の意味の強さ: must > have to > ought to > should
must
① 義務・必要
. 話者の主観的判断による必要性
. 政府・法律・権威者などがその必要性を述べるような⦅よりかたい書⦆で好まれる
I must achieve my goal.
私は目標を達成しなければならない (1人称主語はしばしば話し手の決意を表す)
John says that you must do the work.
ジョンは,君がその仕事をしなければならないと言っている
(間接話法では,話し手ではなく主節の主語が義務を課す・・・ジーニアス英和 [4] では《話し手が共鳴している》としている)
② 強い提案・勧誘・希望
1人称:「ぜひ…したい」
I must meet her new boyfriend.
彼女の新しいボーイフレンドにぜひ会ってみたい
2人称:「ぜひ…しなさい」
You must see that movie.
その映画(《英》では film)は必見です
You must come again sometime.
いつかまた是非いらしてください
③ 強い推量
. 話し手の強い確信を表す
. 確信の度合: must > ought to > should > can > may
You must be a scientist, aren’t you?
あなたは科学者に違いないですね
You must be joking!
(驚いて)ご冗談でしょう
.
have to
. 《米話》ではhave toを話者の主観的判断に用いることもある
① 義務・必要
. 規則や状況などに従った客観的判断による必要性
. それ以外に選択肢がないことを暗示
You may not want to go, but you’ll have to [╳must].
君は行きたくないかもしれないが,行かなくてはならないだろう
I have to do some homework. (≒ I have some homework to do.)
宿題をしなければならない
② …である […する] に違いない
. もとは《米》だが, 今は《英》でも一般的になりつつある
It has to [doesn’t have to] be true.
それは本当に違いない [本当であるとは限らない]
.
[6] “Grammar in Use Intermediate”
・must より have to の方がよく使われる
・have to の代わりに have got to も使える
. (これは他書では《英》では,となっている。この書は North American English を扱っているがこのように記載されている)
must
① 義務
The government must do something about the economic situation.
has to do …
② おすすめ
If you go to New York, you really must visit the Empire State Building.
. you really have to …
③ 書かれた規則や指示
You must write your answers in ink.
.解答はインクで書きなさい(試験問題での,書かれた指示)
have to
① 義務
I have to get up early tomorrow. My flight leaves at 7:30.
. (外的事情)
.
[7] “Longman Grammar of Spoken and Written English”
この書はコーパスを活用して言葉の使用頻度のグラフを掲載しているが,グラフは引用しなかったので,「義務」「必然性」のフォントサイズで表現してみました。
must
① 義務(会話)
. 命令口調が強いので面と向かっての会話であまり使われない
. 義務(学術)
. 学術では(書き言葉なので)この用法でよく使われる
I must now confess something which I kept back from you in Chapter 3.(学術)
ここで私は,3章では書けなかった事柄を白状しなければいけません
② 必然性(会話)
. 会話ではほとんどこの用法で使われる
Your mum must not care.(会話)
お母さんはきっと気にしないよ
.
Your feet must feel wet now.(会話)
足が濡れた感じがする(気持ち悪い)でしょ(そうに違いない)
. 必然性(学術)
. 学術ではこの用法でも使われるが ①の義務 が少し多くなる
.
have to
① 義務(会話)
. 会話でよく使われる
Well I have to get up at ten thirty in the morning to take this thing back.(会話)
What do we have to do?(会話)
. 義務(学術)
. 学術ではあまり使われず,should,must の方がよく使われる
.
② 必然性(会話・学術)
. この用法の頻度は低い
.
should
① 義務(会話・学術)
You should relax.(会話)
.
If the crop is to be harvested by machinery, varieties should be cultivated which do not readily shatter.(学術)
穀物をもし機械で収穫するのであれば,実が容易に落ちない種を栽培すべきだ
[If the crop is to be harvested by machinery], varieties should be cultivated [which do not readily shatter]-A.
② 必然性(会話・学術)
. 学術ではこの用法が少し増える
.
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