中級 〜
NHK Enjoy Simple English 2019年6月10日放送
備中松山城 Bitchu-Matsuyama Castle
に,次のような場面があります。
大道芸人のコンビであるベンとあきとが,岡山県のJR伯備線で,地元の女の子なおみと乗り合わせます。
備中高梁駅(びっちゅうたかはしえき)が近くなったとき,降りようとしているなおみにベンが尋ねます。
Is there something exciting to see here?
なおみが答えます。
There’s a famous castle called Bitchu-Matsuyama Castle.
さて,ベンの
Is there something exciting to see here?
は,
「ここ(高梁)に何かおもしろいもの(ところ)あるの?」
というような意味であることは,おわかりかと思います。
疑問文なのですが,肯定的な答えを期待しているので something と言っています。
では,この英文を,声を出してどう言いましょう?
気持ちが入っていない言葉は長くなるほど,ネイティブでも理解しづらくなります。
気持ちを入れるには,まず英文を読みながら意味を感じられる必要があります。
そのためには,語句の意味だけではなく,構文がわかっていないといけません。
文法です。でも文法のための文法ではなく,言葉を感じるための文法です。
日本語とちがって,英語は語句のつながりがわかりづらい言語です。
それを克服しないかぎり,英語を英語として理解することはできません。
英語では単語が飛び石のように並んでいますが,語句のつながりを大事にして英語を学ぶと,英語に対する感覚は劇的に変わってきます。
今回取り上げるのは短い英文ですが,語句のつながりが気になる英文です。
ちょっと真剣に考えてみましょう。
今回の英文で考えることは,
不定詞to see が副詞的用法(感情の原因)であり,形容詞exciting と結びついて
exciting to see
見てわくわくする
となって直前の代名詞something を修飾しているのか?
それとも,
something exciting
何かわくわくするもの
が,代名詞と形容詞が強くつながった名詞句であって,その名詞句を形容詞的用法の to see が修飾しているのか?
です。
つぎのように記号で示すとグッとわかりやすくなります。
不定詞to see が副詞的用法であって形容詞exciting と結びつき,
「形容詞+不定詞」として something の後置修飾語となっている場合は次の i のようになります。
i (Is) there something [excitinga to《 see|]A heread?
i (iV)) there soSething [[excitinga to《 (v)
. ありますか 何かが 見てわくわくする ここに
. ありますか 見てわくわくする何かが
不定詞to see が形容詞的用法であって
名詞句something exciting を(細かく言えば somethingを)修飾している場合は,次の ii のようになります。
ii (Is) there something excitinga [to《 see|]-A heread?
ii (iV)) there soSething excitinga [[to《s(v)
. ありますか わくわくする何かが 見る(ための) ここに
. ありますか 何かわくわくする見るものが
here は,Is there の there には「そこに」という意味が無いのでそれを補う,場所を示す副詞と考えます。
記号の「《 」は「〈 」を2重にして,前方に位置する名詞(句)にかかる遡及不定詞[14 p.702][43 p.208, 224, 790]であることを示しています。
-A は,通常は形容詞節は直前の名詞を修飾しますが,今回の場合 something が離れて いることをマイナス記号で示しています。
I (was) mad [to | volunteer)]. [91]
S(w=a) mCad to | vo(v)
私は夢中だった ボランティアをするのに
(to volunteer は mad に必須ではない付加部として記号付けしました)
Their argument (was) [impossible to《 follow|]A. [91]
Their arguSent (w=as) C[[ipossible to〈foll(v)
彼らの議論は であった ついていくのが不可能
同時に,次のような注意書きがあります。
Note in particular that the adjective + infinitival could not function as postmodifier in NP structure.
形容詞+不定詞 は,名詞句構造における後置修飾語として機能することはできないことに,特に注意せよ
* Anyone [mada to | volunteer)]A (can’t expect〉much sympathy.
* AnSone [mada to | volu(v)eer)]A (can’t exVpect〉much symO
( * は,非文を示す)
つまり,上の i の解釈は間違いで ii が正しい,ということです。
something exciting to see は「名詞 形容詞+不定詞」ではなく「名詞句 不定詞」として理解されるということでしょう。
Is there something exciting to see here?
を読むときは,something exciting は(名詞句として)ひとまとめで読んで
それに to see と here を付け加える,
という感じでしょうか。
[14] コンサイス英文法辞典 安井稔編 三省堂(1996)
[43] 現代英文法講義 安藤貞雄著 開拓社(2005)
[91]The Cambridge Grammar of the English Language Rodney Huddleston・Geoffrey K. Pullum 著 Cambridge University Press(2002)Kindle 版
名詞のあとにある 形容詞+不定詞は、その名詞を直接修飾しないということですね。ありがとうございました!!
もう一つ質問お願いします。
Note in particular that the adjective + infinitival could not function as postmodifier in NP structure.
の could がどうして過去形なのですか?
それから、基本の基の質問だろうと思うのですが、NP structure とはなんのことですか??
まず,どうして can の過去形とされているcould が使われているのか?ですが,
ウィズダム英和辞典に,現代英語における could の意味について,次のような記述があります。
とあります。
could の基本的な意味(中心的用法)が「過去」ではない,と聞けば驚くかもしれませんね。
今回の例は「丁寧表現」の1つとしておきましょうか。
NPは,「noun phrase」(名詞句)の略ですが「名詞+形容詞句」のような構造も含みます。
『ケンブリッジ英文法』では,伝統文法でいうところの「名詞節」は含めていないようです。
Certain kinds of subordinate clause – those commonly called ‘noun clauses’ in traditional grammar – bear some resemblance to NPs, but do not qualify for inclusion in that category.
Huddleston, Rodney; Pullum, Geoffrey K.. The Cambridge Grammar of the English Language (ページ333). Cambridge University Press. Kindle 版.
形容詞+不定詞 は,名詞句構造における後置修飾語として機能することはできないのはなぜでしょうか?
どうして英語では、そのようなことになってしまうのですか?
1つ考えられることとして,
I made a small house nice to live in.
「私は,小さな1軒の家を,住むのに快適にした」
のような第5文型の文を考えた時,
「形容詞+不定詞」を名詞句構造における後置修飾語として許せば
「私は,住むのに快適である小さな1軒の家を作った」
という解釈も可能になってしまいます。
そのような曖昧さが生じることが,理由としてあるのかもしれませんね。