【お知らせ】
2020年12月14日
・『大学英語の基礎』の「発音編」以外すべてをご覧いただけるようにしました。
英語の見える化の記号づけの基本についてご確認いただけます。
・「代名詞の用法を記号で示す」を公開しました。
【改定記録】
2019年5月29日
that は,主語である場合以外では省略可能であることを追記した。
2019年1月29日
最後の英文で,whether … (名詞節)の記号[ ]を( )に修正した。
2018年12月28日
強調構文(it分裂文)の関係節を示す記号 [ ]–A を,先行詞が it であることをより明確に示すために, [ ]it–A とすることとし,本記事を改定した。
英語講座の教材として利用させていただいている NHK Enjoy Simple Englishで,
I Am a Cat / Episode One 吾輩は猫である/第1話
2018年9月7日放送,2019年3月再放送予定
テキスト p.118 に,
I rested comfortably in the shosei’s hands for a while. But soon I started to go round and round in circles very fast. I didn’t know whether it was the shosei or me that was moving.
という一節があります。
原著(青空文庫)では,
この書⽣の掌の裏でしばらくはよい⼼持に坐っておったが、しばらくすると⾮常な速⼒で運転し始めた。書⽣が動くのか⾃分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。
の部分です。
I didn’t know whether it was the shosei or me that was moving.
動いているのが書生なのか自分なのか,わからなかった
が強調構文になっています。
『現代英文法講義』[参考文献 43 p.439, p.771]では,強調構文を it 分裂文(it-cleft sentence)として扱っています。その内容に従って,整理を試みます。
強調構文(it 分裂文)は,
- it is X that … の構文をもつ
- そのXの部分に強勢が置かれ,Xが新情報の焦点になっている
- 関係詞 that の先行詞は it である
という特徴があります。
この ❸ については,[43]に詳しい解説がありますが,
上の例文でも,もし that の先行詞が,直前の the shosei or me であったならば,訳が
「それが,動いていた書生あるいは私のいずれだったのか,わからなかった」
のようになってしまいます。
また,[43 p.772]には,この it は形式的なものではなく(that 以下を指すのではなく)その it の前で描かれた
いま問題になっている人/事柄/場所/時
というような意味を表している(「逆行照応的な定代名詞」である、すなわちふつうの代名詞)ということも書かれています。
上の例文においても,そのことは理解できます。
強調構文(it 分裂文)は,話題の中の何に焦点を当てるかによって,いくつもの形が作れます。
that は,主語である場合以外では省略可能です。[43 p.770]
John broke the window with a stone yesterday. [43]
ジョンはきのう石ころで窓ガラスを割った
という英文をもとにして,次ような形が可能です。
a. It was John who/that broke the window with a stone yesterday.
. 主語を強調(焦点化)している
b. It was the window that John broke with a stone yesterday.
. 目的語を強調している
c. It was with a stone that John broke the window yesterday.
. 副詞句を強調している
d. It was yesterday that John broke the window with a stone.
. 副詞を強調している
副詞句の中の名詞句を強調する形も作れます。
e. It was a stone that John broke the window with.
副詞節を強調している例もあります。
f. It was when we were in New York that I first met Mary.
さらに主語補語の焦点化も可能です。
(次の例では becomeですが,be動詞だと,アイルランド英語以外では容認されにくいようです)
g. It was a doctor that he eventually became.
.
以上を踏まえて,記号づけを提案します。
.
「英語の見える化」は記号づけとチャンク訳によって
英文構造を「見える化」して学習者の理解を助ける
ということからそのような名称になったのですが,
学習者自身が記号づけをすることによって
学習者の理解度を「見える化」する
ということでもあるというのが実感です。
これは,和訳では得られない成果でしょう。
強調構文(it 分裂文)の記号づけにおいては,
- that は関係詞であり,形容詞節を導くことを明示する
- その形容詞節(関係節)の先行詞が,離れた it であることを示す
- It is X … で強調された X の,英文中での役割を視覚化する
ことを考えます。
具体的には,次のようになります。
強調構文(it 分裂文)の記号づけのルール
1.that で導かれた関係節を [ ]it–A で囲む
it–A という通常とは異なる記号で,強調構文(it 分裂文)であることを示します。
これは,学習者の理解を「見える化」することに重きをおいた記号です。
A は形容詞節であること,– は直前の名詞句ではなくその前の離れた語句を修飾することを示す記号です(強調構文以外でも使うことがあります)。さらに it が修飾される(先行詞である)ことを明示するために it を付加しています(この,語句を明示する手法も,強調構文以外で使うことがあります)。
2.強調された語句の通常の英文中での位置を記号 |¯¯¯¯¯¯¯↓ で示す
強調(焦点化)された語句の,英文中での役割を示し,英文理解を助けます。
この構文がどのようにして作られるか(生まれるか)を示すのであれば,
|¯¯¯¯¯¯¯↓の矢印の向きは逆になって↓¯¯¯¯¯¯| となりそうですが,
構文の研究ではなく,あくまで理解を助けるためですのでこのようにしています。
上であげた例文の記号づけを示します。
SVOC のうち,V と O は,学習者は省略してけっこうです(記号で示せるので)。
お使いのPC,スマホなどによっては,SVOC の表示位置がずれたり,|¯¯¯¯¯¯¯↓の線が途切れたりすることが考えられます。英文理解に支障が生じたときは,お手数ですが,コメント欄からコメントをお願いします。
John (broke〉the window[with a stone] yesterdayad.
JoSh( brVoe〉the wiO
a. It (was) John [that (broke〉the window [with a stone] yesterday]it–A.
a. St(w=) JoCn [ thS’ (brV’oe〉the iO’
b. It (was) the window [that John (broke〉 [with a stone] yesterday]it–A.
b. St (=as) the wiCnow [ tO’ JS’hn V’o〉 O’
. broke の右の空白に下線を入れます。
c. It (was) [with a stone] [that John (broke〉the window [ ] yesterday]it–A.
c. St (=as)Cwith a stone] [ that J S’n (bV’oe〉the iO’
. window の右に空欄の [ ] を書き加えて矢印で指し示します。
d. It (was) yesterday [that John (broke〉the window [with a stone] ]it–A.
d. St (=as) yesCrday [ that JS’on (bV’‘k〉th iO’
e. It (was) a stone [that John (broke〉the window [with ]]it–A.
e. St (=as) a sCne [ that J S’hn (V’ke〉the O’
. with の右に ] を書き加えます。
f. It (was) [when we (were) [in New York]][that I first (met〉Mary [ ]]it–A.
f. St (=as) Cwen S’e (wV’re) [n New York]] [ha S’ fir (V’t〉MO’
. Mary の右に空欄の [ ] を書き加えます。
. [when … ]は副詞節ですが,この場合は補語C となります。
g. It(was) a doctor[that he eventually (became) ]it–A.
g. S ( =as) adCtor [ that S’e eventually (be =’cameC’
Enjoy Simple English の英文は,次のようになります。
I (didn’t know〉(whether it (was) the shosei or me[that (was moving)]it–A).
S (didn’t Vkno〉Owhethr S’ (t=’s) the sho C’‘rm S”at(wasV”
学習者が it–A をつけることによって,この英文が強調構文( it 分裂文)であることを示します。
it 分裂文であることがわかれば,英文中で問題になっていることが it の述語であることがわかります。
問題の内容 は that 以下で説明されます。
[1]ウィズダム英和辞典 第3版(2012)
[2]ジーニアス英和辞典 第5版(2015)
[3]ランダムハウス英語辞典 第2版(1993)
[43] 現代英文法講義 安藤貞雄著 開拓社(2005)