記事中の訂正および追記(2021年6月20日)へ
なお、この記事には続編があります。続編へ
先週の「今週の英語News」20190304( sitは「座る」?/ 補足:動詞が表す状況の分類)は,記号づけを越えた英文理解の話でしたので,ちょっと難しかったようです。
しかし,日本語の動詞と英語の動詞の根本的な違いを理解することは,とても大事なことです。
もう1つ例を紹介します。
中級 〜
Enjoy Simple English 2018年7月11日放送の
「Where Are My Glasses 私に限って」
に次のようなくだりがあります。
ある旅館で,男性客が,温泉の脱衣場で自分のメガネが無くなった,
とフロントの受付係に話しています。
受付係は「お客様のお部屋にないことはたしかですか?」と確認したあとで,
男性客に次のように言います。
I’m afraid I have not heard about anyone finding glasses today.
「あいにく,どなたかがメガネを見つけた,ということは伺っておりません。」
というような意味であることはわかると思いますが,
どのような構文でしょう?
about anyone doing …
という形であれば(後置修飾なので)doing を一時的な状態を表す -ing形として
[about anyone][(who is) doing …]A
という構文を考えるのがふつうでしょうが,
(補足: do が状態動詞であれば,関係節への書き替えで進行形にはしない[43 p.235])
is finding glasses
をふつうに訳せば,
メガネを見つけている(進行)
になってしまいますが,それでいいでしょうか?
(「探している」という意味には,なりません。念の為)
「(すでに)見つけている(完了)」なら日本語として意味がわかりますが,
瞬間の動作である「見つける」の進行形である「見つけている」は,高速度撮影の映像の説明でもない限り考え難いでしょう。
(補足: 完了の意味では,後置修飾で having found とするのではなく,関係節を用いるのがよいようです
[43 p.235])
別の文法的解釈として,
finding が -ing形の名詞用法(動名詞)で,anyone はその主語である,
そしてその -ing形は完了の意味である
という捉え方もありそうですが,
remember,forget,regret の目的語となっている場合は,
過去の事件を示すことが明らかなので,
完了の -ing形(having+過去分詞)ではなく単純な -ing形 を用いる
[43 p.259]
ということですから,remember などの目的語でもないこの finding を having found と解釈するのは無理があります。(2021年6月20日削除)
今回の英文では
‘I have not heard’
の部分で「過去の事件」であることがわかりますので、
単純な -ing形 でも完了の意味を表すことができそうです。
さらに、下のコウビルド米語辞典の例文で示すように
find が「見つける」というほぼ瞬間の動作だけではなく、
その後の「見つけている」状態の意味も含むことができるので
finding は -ing形 の名詞用法(動名詞)で,
anyone はその(意味上の)主語である
という解釈は成り立ちます。
さらに、フロントの受付係が、
I have not heard about anyone finding glasses today.
という言葉で客に伝えたいことは、
I have not heard about finding glasses today.
「メガネを見つけたことについては聞いていない」
ということであり、
それに意味上の主語 anyone を加えて文を整え、
さらに ‘any’ の語感で否定の意味を強調している、
と考えるのが良さそうです。
ただ、この解釈の場合でも、
find を、「見つける」というほぼ瞬間の動作だけではなく、
その後の「見つけている」状態も含むように理解するのが
良いでしょう。
記号を付けると次のようになります。
I(’m afraida〉(I (have not heard) [about (anyone |finding〉glasses todayad)]).
S’m aVfrid〉O S’ (have not V’hrd) [about any(s)e] [|fin(v)ing〉as(o)
すみませんが 私は聞いていません だれかが今日メガネを見つけたことについて
すみませんが 私は聞いていません(だれであっても)
以上、お詫びして訂正いたします。
英英辞典のコウビルド米語辞典[35 ❾]によい例文があります。
I was just finding more time to write music.
曲を書くための時間が見つかって,曲を書いていた(和訳は板倉)
find の説明は次のようになっています。
If you find the time or money to do something, you succeed in making or obtaining enough time or money to do it.
上の例文のfind は「見つける」という瞬間の動作に加えて,見つかった時間を得ている状態の意味も含んでいます。
曲を書く時間が見つかり,その時間を使って曲を書いていたことがわかるのでそのような和訳にしてあります。
なお,was finding という進行形で,一時的なことであることが表現されています。
「今週の英語News」20190304 で紹介した sit の場合と,動作の後の状態を含むという点で共通しています。
Sit down for a while.
しばらく座ってお待ちください
(sit down には「座る」という動作に加えて「座っている」という状態も含むので, for a while との共起が可能)
[2]
今回の英文では,find がメガネを見つけた後の状態(しいて訳せば「知っている」)も含んでいると考えないと理解できません。(2021年6月20日削除)
(「今週の英語News」20190304の「動詞が表す状況」では,Achievement 達成[punctual 瞬間相]の項に I found the key. がありましたが,findを達成動詞,瞬間動詞などと覚えてもしょうがない,あくまでその動詞が使われている状況に合わせて理解することが大事,ということです)
英文に,記号を付けると次のようになります。
I(’m afraida〉(I (have not heard) [about anyone] [|finding〉glasses todayad]A).
S’m aVfrid〉OS’ (have not V’hrd) [about anyone] [|fin(v)ing〉as(o)
すみませんが 聞いていません いかなる人についても メガネを見つけた(+見つけている) 今日
(「(すでに)見つけている」という訳だけでは,見つけた後の状態が強調され過ぎます)
be afraid は他動詞として働いている[45 p.439]と考え,他動詞として記号づけします。
ただし,afraid の右肩に,形容詞を表す a を付けます。
sit や find の他にも,例えば forget の意味として[1]では「忘れる」より前に「思い出せない」という状態の意味が掲載されています。
[1]ウィズダム英和辞典 第3版(2012)
[2]ジーニアス英和辞典 第5版(2015)
[3]ランダムハウス英語辞典 第2版(1993)
[4] リーダーズ英和辞典 第3版(2012)
. 「未完了相」「瞬間相」などの訳語も掲載されている。
[31]OALD オックスフォード現代英英辞典 第9版(2015)
[35]Collins Cobuild Advanced American English Dictionary(第2版,2016)iOSアプリ:コウビルド米語
[43] 現代英文法講義 安藤貞雄著 開拓社(2005)
[45] 表現のたための 実践ロイヤル英文法 綿貫陽・マイク・ピーターセン共著 旺文社(2006
[91]The Cambridge Grammar of the English Language Rodney Huddleston・Geoffrey K. Pullum 著 Cambridge University Press(2002)Kindle 版
どうもすみません。