. at the same time
同時に世界一
南日本新聞2018年10月8日朝刊「こども」のページの英文を引用しています。
初級 中級
Hifumi Abe and his sister Uta ①won the judo world championships in September. They are the first Japanese brother and sister ②to become world No.1 in judo at the same time.
win : vt. に勝つ / を勝ち取る
. (英語の他動詞について学ぶのに,よい動詞です)
championship : n. 選手権大会[試合],優勝[決勝]戦 / 選手権,優勝者の地位
. (日本語の「選手権」にも「選手権大会[試合]」の意味があります)
① won the judo world championships
訳としては「世界柔道選手権(大会という意味)で優勝しました」でよいでしょうが,英語としてはどう理解しましょうか?
② to become …
形容詞的用法のto不定詞として,この用例に何か特徴は感じられますでしょうか?
記号づけ・チャンク訳:
① won the judo world championships
win は「勝つ」という意味で2通りの用法があります。
❶ 〈競技・競争・争いなど〉に勝つ, 勝利を得る(反対語は lose)
. 「〈人・チーム〉に勝つ(うち破る,うち負かす)」は,beat,defeat
win a game [a race, a battle, an election] : 試合 [レース,戦い,選挙] に勝つ
win a beauty contest : 美人コンテストで優勝する
win an argument : 議論で勝つ
❷〈勝利・賞品など〉を勝ち取る,〈お金〉を〔賭けなどで〕獲得する
win the Novel Prize in physics : ノーベル物理学賞を獲得する
win a gold medal : 金メダルを獲得する
win $100 from him at cards : トランプで彼から100ドルをせしめる
win a reputation as a professional : プロとしての名声を得る
win に2通りの用法があり,championship にも2つの意味(大会と地位)があるので,① は
・選手権大会で勝つ
・選手権を獲得する
の2通りの解釈が考えられますが,[1] [2] とも
win the championship : 選手権を獲得する
と解釈しています。
[1] と [2] で判断が異なる例もあります。
win a lottery : 宝くじに当たる
は,[1] では ❶ の項に,[2] では ❷ の項に入れています。
❶ なら「くじ引き」も「競争」の一種と解釈しており,
❷ なら「当選金を獲得する」という意味合いで解釈しているのでしょう。
② to become …
to不定詞の形容詞的用法ですね。
この用例の「特徴」を説明する前に,少し整理をしておきます。
中級
to不定詞の形容詞的用法
直前の名詞句を修飾します。
その名詞句との関係で4つのタイプに分けられます。
引用した英文に記号を付けさせていただきました(SVOC は略しています)。
1. 名詞句が to不定詞の(意味上の)主語
The man [to |help〉you]A is John. [43]
あなたを助けてくれる人は,ジョンです
● The next [to |speak)]A was Mr. Green. [43]
. 次の話し手はグリーン氏だった
● The last guest [to |leave)]A was Mary. [44]
. 最後に去った客は,メアリーだった
2. 名詞句が to不定詞の(意味上の)目的語
You’ll need something [to《eat|]A. [44]
何か食べるものがいるでしょう
(意味上の目的語には下線を引きませんが,その代わり「 〈 」を追加して「《 」として不定詞の名詞句への結合を表現しています)
I’ve bought a book [for Jim to《read|]A. [44]
私はジムが読む(べき)本を買った
(for は,to不定詞の意味上の主語を導く「記号化したfor」)
Mary needs a friend [to《play with|]A. [44]
メアリーは,いっしょに遊ぶ友達が必要だ
(名詞句は前置詞withの目的語ですが,他動詞句play with の目的語とも言えます)
3. to不定詞が関係副詞節の働き
The time [to |go)]A is 9:30. [43]
The time [at which to |go)]A is 9:30.
= The time [(when/at which) you (should go)]A is 9:30.
出発時刻は9時半だ
The way [to |do〉it]A is this. [43]
The way [in which to |do〉it]A is this.
= The way [(in which) you (should do〉it)]A is this.
そのやり方はこうです
The place [to |stay)]A is the Ritz.
The place [at which to |stay)]A is the Ritz.
= The place [where/at which you (should stay)]A is the Ritz.
お泊まりの場所はリッツ(ホテル)です
4. 名詞句と同格的
He forgot his promise [to |come)]A. [44]
彼は(自分が)来るという約束を忘れていた(訳を改変しました)
(promise と [ を |¯¯¯¯¯| で結んで同格であることを示します)
to不定詞の形容詞的用法で注意すべきこととして,[81]に
上の1. と2. では,名詞句とto不定詞の結びつきが蜜である(学習しやすい)
3. では,結びつきは,かならずしも蜜ではなく,to不定詞は不安定な立場にある(英語学習者による むやみな結合は「非英語」になる可能性がある)
ということが述べられています。
to不定詞は未来指向(動名詞は過去指向)と言われます。
形容詞的用法の to不定詞は「…するはずの,することのできる,すべき」など未然の動作・状態を表すのが通例です。
しかし,上の1. の用法では,●を付した例文のように,主節の動詞と同時またはそれ以前の過去を示し,「…した」の意味になることがあります。
このように「過去」の意味合いでも使われるのが1. の用法の特徴です[81 p.181]。
今回の ② to become … も they are より過去のことですね。
[1] ウィズダム英和辞典 第3版(2012)
[2]ジーニアス英和辞典 第5版(2015)
[43] 現代英文法講義 安藤貞雄著 開拓社(2005)
[44] 基礎と完成 新英文法 安藤貞雄著 教研出版(1987)
[81]英語の語法研究・十章 渡辺登士著 大修館書店(1989)
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