【記号づけの研究】山括弧〈 〉: because の用法の違いを示す

中級 〜

ブログ記事の新しいシリーズ記号づけの研究を始めます。

第1回は,because の用法の違いを説明するための 新しい記号の導入を提案します。

この話の発端は,NHKラジオ Enjoy Simple English 2018年4月号「走れメロス/第3話」のメロスのセリフ(独り言)です。

I know I can still run.
If I don’t, my best fiend, Selinuntius, will die because he believed in me.

この “Selinuntius will die because he believed in me. ”の部分です(Selinuntius は同格語ですが主語にしています)。
普通に訳せば,

セリヌンティウスは,私を信じたので死ぬ(処刑される)だろう

となります。

そこで問題提起です。

Itakura
この部分の私の訳は
「セリヌンティウスは,私を信じたばかりに信じたせいで)処刑されるんだ。」
です。
Ms. Q
訳し方が違うだけじゃないんですかぁ?

と思われるかもしれませんが,まず,辞書で because の用法を見てみましょう。
記号も少し付けさせていただきます。

1.主節の理由・原因を説明する用法

because の最も普通の用法です。

I went home early yesterday(, )[because I had a little fever]. [2]
私は昨日早く帰宅しました.  少し熱があったからです
because節は,主節の内容(出来事)の理由

走れメロスの例が,上と同じ用法であるのなら,次のような解釈になります。
(この用法では通常は
becauseの前にコンマがあります

Selinuntius will die, [because he believed in me].
セリヌンティウスは死ぬでしょう。それは私を信じたからです
because節は,主節の「セリヌンティウスが死ぬ」ということ(出来事)が起きる理由
.

2.否定語を伴った主節とともに用いる用法

試験問題に使われそうな用法です。

Don’t get angry[just because your parents are still treating you like a child]. [2]
両親がまだあなたを子供扱いしているからといって腹を立ててはいけない

She didn’t come home[because it was raining]. [2]
彼女が家に帰ってきたのは雨が降っていたからではない

この用法の場合は,

not などの否定語は(主節の動詞だけではなく)文全体にかかる
becauseの前には通例コンマをおかない

ということなので,次のような山括弧を使った表記法を考えてみました。

Don’tget angry[just because your parents are still treating you like a child].
してはいけない 両親がまだあなたを子供扱いしているから腹を立てる(ということを)

She didn’tcome home[because it was raining].
彼女はしなかった 雨が降っていたから家に帰る(ということを)

この表記法は,

英文構造を学問的に正確に示そうとしているのではありません

主節の否定語not が,主節内の動詞だけではなく,
その動詞because節を合わせた内容を否定していることを示して,

理解を助けようというものです

この表記法を走れメロスの英文に適用すると,問題の部分の私の解釈は,

Selinuntius willdie [because he believed in me].
セリヌンティウスは 〜だろう 私を信じたせいで死ぬ

のように示せます。
because節は「死ぬ」原因であって
友が死ぬという出来事が起きる理由ではない
という解釈です。

Because of を使って同様の意味を表わせます。

Selinuntius wll die [because of his belief] [in me]a.
because of は前置詞として扱います。

.
では,元の英文全体で示します。

[If I don’t], my best fiend, Selinuntius, willdie [because he believed in me].

この英文では,「もし走らなければ」セリヌンティウスに起きることを,
will に続けて述べようとしているので,
〈 …. 
の部分は「私を信じたせいで死ぬ」のようにひとまとまりで解釈されるべきです。

[If I don’t], my best fiend, Selinuntius, will die, [because he believed in me].

のように「もし走らなければ」と「私を信じたので」という(仮定上の)原因や理由を述べる2つの副詞節を,主節に対等にかけるのであれば,別々の文にすべきでしょう。

元の英文には because の前にコンマが無いことも,私の解釈を後押しします。
読みあげるときは,die because … me を一気に読んで「… せいで」という意味を感じとりたいところです。

because のこの用法と 否定語を伴った主節とともに用いる用法 を合わせて

直前の動詞句にその理由・原因を付加する用法

としてもよいのかもしれませんね。.

 

3.主節の根拠を述べる用法

主節の後で主節(で主張した事柄)の根拠をべる用法です。
主張していますが,“I think (that) …” ,“I believe (that) …” などが省略されています。

Bill loved her, because he came back to her. [2]
ビルは彼女を愛していたんだね. だって, 彼は彼女のもとに戻って来たんだもの

I think” を補って考えると,

I think (Bill loved her),[because he came back to her].

となり,ふつうの because の用法(1.主節の理由・原因を説明する用法)となります。

なお,because ではなく等位接続詞のfor であれば “I think” を補う必要はありません。

参考文献
[2] ジーニアス英和辞典 第5版(2015)

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ABOUTこの記事をかいた人

板倉

〜2016 鹿児島大学水産学部教授 ,2016〜2017 水産学部特任教授(英語教育担当),2016〜 鹿児島大学名誉教授/ 〜2017 CIEC(コンピュータ利用教育学会)理事,ネットワーク委員会委員長,2018〜 CIEC 監事/ 2015〜「英語の見える化」研究会主宰/ 資格: 獣医学博士(北海道大学)/